no-goodnik

何が楽しいの

 


連れの視線が鬱陶しい。
色々な物が綯い交ぜになった視線。
せめて誤魔化すなりすればいい。そこまで知恵が回らない訳でもないだろうに。
時折酷い目をする。一瞬だが。
自分では気付いていないのかもしれない。気付いているのかもしれない。
希望だか期待だか、そういった類いのものが混ざっているのがやりきれない。
救われないと思う。浅ましいとも思う。
同時に何より羨ましい。

夕食までは一緒に取った。
余程のことが無い限り夕食は一緒に取る。既にそれが習慣になっていることに改めて驚く。
場所を変えて飲むらしいウルフウッドと別れて宿に戻った。
やけに疲れていた。
シングルが空いていて良かったと思いながら両手で窓を開ける。
吹き込む風が生温かった。

月が出ていた。






酒場からの帰り道。
昼間と変わらないように自分の影がうつる事に少し驚く。
夜は暗いという思い込みはどこからくるんだろう。
この星では夜出歩くのに困る事は無い。五つも月があれば真っ暗闇ということは滅多にない。
それでも何故か夜は暗いものだと信じ込んでいるのだ。
ふと、先に戻ったヴァッシュの事が頭を過ぎる。
目の端に映る五つ目の月は少しぼやけていた。

左手には酒瓶。
歩くたびに鳴る液体の音が酔った頭に響く。
例えば、これを割るとする。
わざわざ頭上に振り上げて打ち下ろすのは、派手好みの馬鹿がやることだ。
手首を軽く返し、何かに当てその反動で割る。最小限のモーション。
割れた瓶は最短の距離と時間で相手に届く。
とりたてて覚える程の事ではない。そこいらの子どもでも知っている。
そういったものが全く役に立たない相手。
何故か無性に腹が立った。
只の八つ当たりという事は分かっていた。
月のせいにした。


海苔牧師


「いい眺めというべきかありがた迷惑というべきか」
ヴァッシュが力なく笑う。困ったように。
実際そう困っている訳でもない。酔っ払いの相手が面倒なだけだ。
「もう少し喜ばんかい。滅多にないでこんなサービス」
ヴァッシュの腹に馬乗りになったままウルフウッドが言う。
「たまには人の都合っての考えて行動したほうがいいってオマエ絶対」
「オドレにだけは言われたないわ」
「同感だねー」
無理に起こされたので頭が痛んだ。
鍵を掛けていた筈なのにどうやって入ったんだろう。
頭が働かない。床に転がっている酒瓶が目に入った。
「で、いい加減どいてくんない?」
「付き合え。どうせ暇やろ」
「人の話聞いてんの」
どこか途方に暮れたようにヴァッシュが言う。




「月が眩しくてな、眠れへんねん」

言った途端空気が変わるのを他人事のように感じる。
肌が粟立つような。
ヴァッシュは月の話をひどく嫌う。
分かっていてあえて言う。
今更、という思いもある。
ざまを見ろと笑う。ヴァッシュが自分に何を期待しているのかは知らない。
「お前さぁ、何が楽しいの」
表情を変えずにヴァッシュが言った。
襟ぐりを掴んでいた手をゆっくりと払いのけられる。
箍が外れる。
月に穴を開けた化け物。
瞼を閉じる。 眼の裏側が冷える気がした。
「そう言う顔、いいね」
まるで別人のように聞こえる。やはり兄弟だと酔いの巡った頭で考えた。
どんな顔をしていたんだろうと思う。
自分では分からない。
顎を掴まれた。瞼を無理矢理開かされる。
窓から差し込む月の光。
風でカーテンが揺れる度、影がちらつくのが煩わしい。




「付き合うよ」


月を壊した事を悔やむ化け物。
化け物と馴れ合う牧師。

「ワイ、おどれ嫌い」
「・・・やっぱ気ィ合うよね俺ら」



暗闇を歩くというのは、きっとこういうものなんだろうと思った。




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フクダ様のトライガンサイトR208で800番ゲット。
リクエストは

・V鬼畜
・ケンカ気味VW
・オチは牧師が押し倒されて暗転

というなんだか詰め込みすぎで訳の分からんものでしたがそれが素晴らしいブツになって帰ってきました。
ああ、踏んでよかった。私エライ。
しかしゲットしたはいいが、飾る場所に困り、こんなページが出来てしまいました。
副管理人に見つかったら殺されそうです。

7/11レイアウト変更。…添付されてた時のまんまのほうがのほうがスッキリしていたような…あああフクダ様御免なさい。
ついでに小説のかっこいい雰囲気ぶち壊しの挿絵追加。あああああ御免なさい御免なさい。
トンガリさんも下の方に下書きの段階ではおりましたが、
「コートめんどくせえ」という理由だけでトリミングにより消去されました。