『午睡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し……風は涼しくなってきたけどまだまだ日差しは暑い。

こういう日はどっか涼しいところで昼寝するのが一番。

さて、何処へ行こう?

二軒先の置屋の縁の下。

川縁の船着き場の影。

ううむ、大黒屋さんの店先ってのも捨てがたいなぁ。

ああ、そうだ、あそこに行こう。

お寺の境内。裏っ側にある大きな大きな木の根本。

今日みたいな日はきっといい風が吹いている。

ひょこりひょこりとお寺参り。

人目に付かないようにコッソリ裏に……

ああ、なんだ。先客がいるのか。

しかたないな。もめるの嫌だし……アレ?

そーっと近づいてみる。

ああ、彼だ。

いつもはとても他人の気配に敏感な彼が、ぐっすり眠り込んでる。

珍しいな。

警戒心の欠片もなくぐっすり眠り込んでいる彼は、なんだかいつもより幼く見える。

よく見たら……なんか着物が乱れてる。

一生懸命歩き回ったみたい。

そうか。彼の毛皮は黒いから。

きっと僕より暑さが堪えるんだ。

涼しいところを探して、町の中を歩き回ったんだ。

置屋や大黒屋は、彼が黒猫だからと言って側に近づくのを嫌がるし。

彼は水が大嫌い。

だからここに来たのか。

ここなら彼を追い払う人間はいないから。

静かに彼に寄り添った。

彼の眠りを妨げる物が来たら追い払おうと思って。

けれど。

「あ? 誰や? ……トンガリ?」

目を擦りながら彼は起き上がってしまった。

「ゴメン、邪魔する気はなかったんだよ。僕もう行くからゆっくり寝てて?」

悪いことしちゃった。

結構神経質だから、きっともう眠らない。

申し訳なくてちょっとクッタリしながらその場を立ち去ろうとしたら。

クンッと着物の裾を引かれた。

「え? 何?」

「ん〜。なんか……なぁ……?」

木に寄りかかって座り込んでる彼の横にしゃがみ込んだら、襟首を捕まれてコロンと転がってしまった。

慌てて起き上がろうとしたんだけど。

「アカン。そのままでおって。」

何か人肌恋しいねん、と小さな声で呟く声。

ああ、これ完全に寝ぼけてる。

まだ半分夢の中だ。

けど嬉しい。

意地っ張りな彼はなかなか甘えてくれないから。

僕は……膝枕してもらえるという特典付きだし。

多分目が覚めた時は大騒ぎするんだろうけどね。

 

ちょっと幸せなある日の午後。

 

 

 

 

 

 

 

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スミッコBBSにて彩香さんから

「この絵でなんか書けや」と奪い去りました。

わーい人様の書かれた「無頼猫」だよ〜キャッキャッ(大はしゃぎ)

寝ぼけ牧師かーわいい!

挿絵は完全猫バージョンも描こうと思ってたんだけどまたしてもタイムアウト。

彩香さん有難うございました!!